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ランドセル

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そこにはたくさんの桜の木があった。花は満開に咲いていて、総合的な濃いピンク色を呈していた。
風は吹いていないけれど、たくさんの花弁がくるりと螺旋を描きながら、ゆっくりと音もなく地面へと降って行く。

鋼鉄を編むようにして作られた、特徴のあるそれでいて頑丈そうな門は固く閉ざされているのだが、その向こう側には大きな小学校の校舎と、校庭があることが見てとれる。
桜の木は門の端と端を結ぶように、それらをぐるりと囲んで立っているのだった。
夜の闇に、その桜はピンク色のほのかな灯りを放ち続けていた。校舎や門の周囲に灯りはひとつも見当たらない。
桜の木全体がおおきなピンクの行灯のように、ふんわりと辺りを照らしているだけだった。

校門の前には、私と未就学の男児が手を繫いで立っていた。
私は白に限りなく近い淡いピンクのツーピースを着、そして子どもは体に不釣合いな程大きく見える、ピカピカの黒いランドセルを背負っている。二人はこれから入学式に臨むであろう服装をしているのだ。
男児は胸を張り、とても姿勢良く立っていた。入学式の前のワクワクした気持ちが彼の全身から溢れている。
そして、私のほうはと言えば、それに付き添うかのように彼の左側に同じように立っている。二人はさっきから同じ姿勢で校門の前に立っていて、そして門越しに暗い校舎を眺めていた。

ある時、男児の様子が少し変わったことに、私は気づいた。
繫いだ手からそれを感じたのか、それとも何か別の理由からか、私はゆっくりとその男児と向き合う姿勢をとった。
男児は私の目をみて、こう言った。
「僕ね、こんな風にランドセルを背負ってね。皆と学校に上がりたかったんだ」
彼の目に涙は浮かんではいなかった。ただ淡々と感想を述べている感じだった。小学校の前まで来てみての感想。ランドセルを背負ってみての感想。そんな、ちょっとした感じたことをただ言ってみただけだよ、という風だった。
私は男児の目を見つめた。涙は溢れていない、彼の黒い瞳。しかし、じっと見つめると、その奥にはなんとも表現できない悲しみの小さな炎がちらちらと踊っているのが見えた。今にも消えてしまいそうな、本当に小さな炎だった。もうじき消える。私は瞬間的にそれを感じとった。消えてしまう。

私は男児と向き合って立ってはいたものの、目線を合わせるために膝を折り、しゃがんでスカートの裾に皺を寄せた。ストッキングを履いた片方の膝を地面につき、両手で彼の両方の上腕部に手をまわし、自分の体を安定させてから、私はひき続き男児の瞳の奥の小さな炎の揺らめきにアクセスした。

彼はそれを待ってから、ゆっくり続けてこう言った。彼の話しぶりはとても落ち着いていて、しっかりしていた。
「僕ね、こんな風に学校へ行きたかったんだ。それはもう叶わないことだけれども。皆、手を尽くしてくれたんだよ。けれど、僕の命を救うことは誰にも出来なかった。たくさんのお医者さんが僕を救おうと手を尽くしてくれたんだ。でも、無理だった。」
彼は言ってから、溜め息をひとつつき、頭を横にゆっくりと振った。なんとも落ち着いた様子だった。人間は潔く心の底から何かを諦めるということをすると、こんなにも安らかなのかと、私は思った。彼は確かに悲しそうではあった。けれども、その悲しみを誰かに訴えようとしているのでないのは明らかだった。彼は分かってほしいのだ。もう無理なのだと。諦めたのだと。そして、ここで、一つの                  
旅が終わりを迎えるのだと。

私は男児の手をとり、ポタポタと涙を垂らし始めた。男児は泣いてはいなかった。彼は相変わらずとても落ち着いていて、そして安らかだった。しかし、そのことが私の涙を更に誘うのだった。垂れた涙はスカートの淡いピンクに雨垂れのようなしみを幾つも造り、そして私はその濡れた感覚を自分の太腿で微かに感じた。私は自分が流す涙を自覚したせいか、更にしくしくと泣き続けた。
ひとしきり私が泣くのを、男児はじっと待っていた。
恐らく数分間、二人はそうしていた。私は涙を流し、男児は静かに居た。

喋れる位に呼吸がある程度整ってから、私は男児にこう言った。
「諦めちゃ駄目よ。あなたは学校へ行くことがちゃんとできる。お姉ちゃんが日本中で一番腕のいいお医者を探してあげる。だから諦めないで。一緒に頑張りましょう」
私のこの言葉に嘘はなかった。その瞬間、心の底からそう思ったのだ。しかしながら、私にも分かっているのだ。世の中には、時には諦めが必要なこともあるのだということ。物事には全て、始めと終わりがあるのだということ。そして、それが抗えない宇宙の法則で成り立っている場合もあるのだということ。
彼は、私を見つめて静かに言った。その口元は微かな笑みを作っていた。「ありがとう」
「僕ね、本当に感謝しているんだ。皆、僕のために本当によくやってくれたんだよ。色んなお医者さんがあらゆる手を使って僕を治そうとしてくれた。それに家族も。お父さんもお母さんも、皆本当に僕のために頑張ってくれた」
私はただ涙を流しながら、それをじっと聞いていた。それを確認してから、彼はまた静かに続けた。
「僕ね、皆に『ありがとう』って伝えたいんだ。お医者さんたちやお父さん、お母さん。その他の僕を支えてくれた人たちにね。僕はもう行かなくちゃいけない。だから、もう学校に行けなくていいんだ。ここでこうして、ランドセルを背負うことが出来た。小学校に来ることも出来た。この桜もとても綺麗だね。もし、お姉ちゃんが僕の為に何かしれくれるんだとしたら、できればお父さんとお母さんに、僕はもう苦しんでいないと伝えて欲しい。僕はもうこんなに安らかで、苦しくなんかないってことを。お父さんとお母さんは、僕のことでとても悲しんでいるけれど、悲しまないで、僕が居なくなってもちゃんとこれからの人生を楽しんで生きてほしい、と。僕が思うのはそれだけ。本当に皆に感謝してるし、皆の幸せを心から願ってる」
言い終えると、彼はにっこり笑って見せた。
私はとうとう耐え切れず、彼を力いっぱい抱き寄せた。
彼の温もりを感じた気がした。残された、命の微かなバイブレイション。



夢から醒めたとき、私の枕はびしょ濡れだった。微動だにしなくても、それが分かるくらいに濡れていた。
夢だったのだと分かるのに少し時間がかかった。布団の中で私は嗚咽し、また泣き始めた。声をあげてわんわん泣いた。どれ位そうしていただろう。数十分もすると私の涙は果たして枯れ、疲れ果ててまた眠りについた。再び眠りに落ちるとき、今何時だろう?と眠い頭で考えたが、時計を見ることはしなかった。外はまだ暗かった。
再び眠りについたものの、その後は何の夢も見ずに普段どおりの7時に私は目を覚ました。数時間前に見た夢のせいで、眼球は赤く、そして瞼は腫れあがっていた。頭痛もした。それでも、現実の世界に意識を引き戻さなければと思い、私はテレビの電源をオンにした。あと一時間もすれば、車を運転して仕事場へ行かなくてはならないのだ。朝のテレビショーをただ呆然と観ていた。そして、さっきの夢は一体なんだったのだろうと考えた。唯一、確信があったことはと言えば、その男児は自分が知っている実在の男の子であった。直接の知り合いではないが、テレビのニュースでよく取り上げられていた子だったのだ。当時2歳の彼が、夢の中では体の少し小さめな6歳児として登場しただけだった。
どうして彼が夢にでてきたのかしら、と私は思った。
その時、キャスターがニュースを読み上げた。そのキャスターは淡々と、その2歳の男の子の死をテレビの電波を通して、全国に知らせていた。

私がその夢を見てから18年の月日が経った。
今でも桜の咲く季節になると、胸を掻きむしられるほどの衝動に刈られる。
と同時に、あの闇夜に輝く桜吹雪を懐かしく思うのだった。
                                               
天野夕海

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